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アンティーク食器を使う理由

世の中にマイセンやロイヤルウースターなどの高級食器を扱う喫茶店は多々あれど、本物のアンティーク食器を使うお店はそう多くはありません。と言いますのも、アンティーク食器を取り扱うにあたって従業員にアンティーク食器や家具に対する知識や見識を教え込み、その扱いの難しさを理解・実践させるのは大変困難だからです。
今時の飲食店で食洗機を使用しないお店はほとんどありませんが、アンティーク食器は大変繊細なため食洗機を使うことは出来ません。洗剤を使い、可能な限り柔らかいスポンジなどを用いてやさしく撫でるように洗うことができなくては、簡単にダメージを受けてしまいます。
当店は「100年前のハイカラ時代にタイムスリップする」ことをコンセプトに店作りしておりますので、アンティーク家具のみならず食器もアンティークが大多数を占めております。それによりお客様には、渡来してきた外国人達の心豊かだった異人館街での生活を垣間見て頂き、最高にくつろげる時間を過ごして頂きたいのです。

ウォーターグラス

当店のウォーターグラスは、1930年頃のフランスはサン・ルイ製のグラスを使用しております。当時のガラス製品はまだ手工業が中心だったために口あたりも柔らかく、持った感じの重みがしっかりと感じられながらも薄造りで、とても軽やかな音が出ます。
このグラスをウェルカムドリンクに用いることで、お客様のアンティークで豊かな時間の入り口を開かせて頂きます。

ワイングラス

ウェルカムドリンクの次にご用意するのが当店自慢のほうじ茶。熱々で香り豊かなほうじ茶を楽しんで頂くためにご用意しているのが、ハンガリーはカリ・クリスタル製の手吹きワイングラス。
このグラスはアンティーク製品ではなく現代物ではありますが、職人の丁寧な物作りに惚れ込み、また、敢えてワイングラスを選ぶことでほうじ茶の豊かな香りを目一杯楽しんでいただく事が可能となりました。もちろん耐熱ガラスではないのでお茶を注ぐのにもとても気を遣いますが、そこは茶道家としてのノウハウをフルに活用し、ガラスが割れないギリギリのラインで上手く注ぐことでほうじ茶の味わいと香りをより一層お楽しみ頂いております。

ボンボニエール

ほうじ茶と共にお出しするのが、スナックやラウンジにおけるチャームにあたるお菓子。その入れ物として使用しているのがタイ王室御用達のベンジャロン窯が作っているボンボニエール。こちらもワイングラス同様アンティークではなく現代物ですが、その雰囲気の良さやかわいらしさから一目惚れし、「ついつい」買ってしまいました。
ついつい買ってしまったと言うだけに最初は使用用途もあまり深くは考えていなかったのですが、実際買ってきてから「ああ、これにちょっとしたお菓子を入れてお出しすれば良いじゃないか」と言う、なんとも店主らしいいい加減な発想で今に至っておりますが、実際お客様からは大変お喜び頂いております。

デミタスカップ

当店には世界的なレベルの烏龍茶を備えておりますが、それを淹れてお召し上がり頂くデミタスカップは、オールドノリタケの1911年~1941年頃のマルキ印(英国輸出用)のもの。金の盛上げ技法を用いて花籠をデザインしており、とても品のあるカップです。
デミタスとはそもそもフランス語の「デミ(半分)」「タス(コーヒーカップ)」を意味します。その字の如く、通常のコーヒーカップの半分(75ml)程度の容量しかなく、そもそも烏龍茶の楽しみ方がさらに小さな器に入れたものを一気に飲む形式ですので、それに近い形を取ることが出来ると判断いたしました。

ティーカップ

ティーカップは2種類あり、合計五つあるティーカップのうち二つはデミタスカップ同様、オールドノリタケの1911年~1941年頃のマルキ印(英国輸出用)のもので、金盛上の花籠デザイン。残り三つはオールドノリタケの1914~1920年頃の製造、米国輸出用のM印がついたクリスマスボウルと言うモデル。1930年頃に専用の印が出来たようですが、M印なのでこれは初期の物と断言できます。
こちらのティーカップは様々な用途を考えており、今のところ6月頃に入荷する限定商品、琉球紅茶の手摘み・ファーストフラッシュをお召し上がり頂こう、と考えております。

ケーキプレート

ボンボニエールやウェルカムドリンクを乗せてお出しするケーキプレートは、ロイヤルウースターの1963年製のもの。当店の食器の中では比較的若い方ですが、それでも既に60年近くの時を過ごしております。
サイズが本当にちょうど良く、ボンボニエールとウェルカムドリンク、そしておしぼりをチョコンと乗せてお出しするのにピッタリ。当店の開店準備中に近所のアンティークショップでたまたま見つけて即決で買ったものでした。

シュガーポット

当店のシュガーポットに、お砂糖は入っておりません。入っているのはお茶です。その中でもオールドノリタケのシュガーポット2点には、それぞれ抹茶を入れております。
向かって右側の、つまみが尖った方には入荷したときにだけお出ししている、まさに「気まぐれ限定商品」である極上抹茶を、向かって左側には当店のレギュラー抹茶をそれぞれ入れております。
いずれもオールドノリタケのマルキ印ですが、特に向かって右側の極上抹茶を入れている方については、ノリタケが外国輸出用に食器を作り始めた、最も初期のマルキ印が施されております。年代からすると1900年~1911年頃のもの。
もう一つのシュガーポットには1908年~1925年頃に使用されていたマルキ印の、転写ではなくスタンプ印。スタンプ印が1915年頃より使用されているため、前述のシュガーポットよりは少し年下、と言うことになります。ですので店主は二つのうち古い方を姉、若い方を妹と呼んでおります。
どちらも金彩の盛上げ技法を用いておりますが、古い方については絵を描いていないことから、当時まだヨーロッパ的な絵描きを満足に出来ない中、どのようにすれば欧米の人々に喜んでもらえるのか四苦八苦しながら考え、作っていった様子が目に浮かんでくるようです。

ティーポット

ティーポットはオールドノリタケのマルキ転写印のため年代は1908年~1915年頃と考えられます。こちらはオークションでたまたま見かけ、あまりに気に入ったために即決で入札、そのまま上手く落札することができました。
あまりに美しかったから買ったのであって、特に使用用途を考えずに購入してしまい、いまだに使い道を考えております。今のところは烏龍茶をお出しするのに使用しておりますが、今後状況に応じて他の使い道を考えようと思っております。

リキュールグラス(中・小)

小さなワイングラスは、1890年のフランスはサン・ルイ製。切り子を淹れたところに金彩を施しており、ただただ美しいの一言に尽きます。
これは近所のアンティークショップに立ち寄った時に一目惚れし、すぐに「これで玉露を召し上がって頂こう、小さい方は夏の時期に碾茶を淹れてお出ししよう」と考えました。こういった食器でお茶を飲むというのはあまり誰もしていないように感じますが、実際にやってみるとなかなか心が豊かになって良いものです。
ちなみにアンティークのワイングラスやリキュールグラスは通常6脚1セット(ハーフダース)なのですが、いまどき1セットまるごと買う人は極めて少ないため、その多くがばら売りされております。実際このグラスも元々ばら売りでしたが、奇跡的に6脚全て揃った状態で販売されていたので、喜んで中サイズと小サイズをそれぞれ6脚1セットずつ購入させて頂きました。
あまりに気に入っているため、それぞれ1脚ずつは自宅にて保管しております。

急須と湯冷まし

急須と湯冷ましは、玉露を淹れるために用意しております。玉露に関してはお客様の目の前での簡単なお点前を伴いますので、ここはちゃんとした煎茶道具を用いなくてはいけません。と言うより、欧米アンティーク食器ではまともに煎茶を淹れる事など到底不可能なのです。
そこで用意したのが、当時欧米でも大変喜ばれていた薩摩焼の急須や湯冷まし。主として用いているのは薩摩焼の名工中の名工であり明治初期に活躍した、12代沈寿官(ちんじゅかん)の作品。
明治初期、幕藩体制の崩壊により藩のバックアップを失った多くの窯元が消えていく中、12代沈寿官はみずから経営をする必要性に気づき、沈窯を残さんと海外輸出用の様々な作品作りに乗り出し、その卓越した技術とデザインセンスにより見事名工の1人に数えられるまでに成長を遂げました。
柄は金襴手に菊の絵を施しており、その絵柄の構図やバランスの良さ、そして絵そのものの美しさが際立っております。この急須が生まれてから既に120年ほどの時が過ぎていると思われますが、その間の所有者達によって相当使い込まれていたのでしょう、最初は急須の口が目詰まりを起こしてそのメンテナンスに大変手間を取られた事を未だに良い思い出としております。

抹茶碗

当店の主力メニューである抹茶をお出しするには、どうしても抹茶碗が欠かせません。しかしながら西洋アンティークはオールドノリタケを含む大半が磁器なので熱を通しやすく、抹茶を点てても手に持てないほど熱くなってしまいます。ですので抹茶碗だけは西洋アンティークやオールドノリタケではなく、正統派の日本産の陶器茶碗を用いております。
いまのところ当店で展示している抹茶碗は18点。お客様にはご注文頂いてから、この18点の中からお気に入りの一碗をお選び頂いております。
この記事で全ての茶碗を語り始めるとあまりにページが長くなりすぎるので、一碗一碗についてのご紹介は敢えて割愛させて頂きます。詳しくは実際に当店にお越しになった際におたずねくださいませ。

このほかにも、ここでは紹介しきれない様々な食器が当店には御座います。ぜひご来店いただき、いろいろなアンティーク食器とふれあい、その味わいを確かめてください。

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